食は万病のもとか？ -――カナダ・イヌイット社会における食生活の変化

　カナダの極北地域には広大で，荒涼なツンドラ地帯が広がっている．そこは人間が生きていくことが不可能ではないかと思えるほど厳しい極寒の地であるが，4,500年ぐらい前から人間が住むようになった．彼ら/彼女らが極北地域の厳しい自然環境のなかで生き延びることができた最大の理由は，衣食住という文化的な工夫によって適応に成功したからである．現在，同地域に住んでいる人々はイヌイットと自称しており，2021年時点の総人口は約7万人である．