美容医療における健康保険と医療賠償責任保険

Health insurance and medical liability insurance in aesthetic medicine

　通常の医療では当たり前に利用されている2つの保険，健康保険と賠償責任保険が，美容医療界では当たり前のものではない．健康保険についていえば，美容医療に健康保険が適用できないことは当然のことであるが，美容医療で生じた合併症（美容医療に起因する健康被害）についてまでも，厚生労働省が健康保険の適用を否定するという指導を行っていた．今はこの健康保険法に反する違法な指導は行われなくなったようにみえるが，厚生労働省はそれまでの誤った指導の取り消しを通達などで周知するなどの必要な措置をしていない．そのため，一部の医療機関でいまだに美容医療に起因する健康被害者に対して保険医療を給付しないという人権侵害が続いている．一方，医療賠償責任保険においては，歴史的にずっと “美容を唯一の目的とする医療行為” を賠償の対象となる医療行為から外している．これについてもさまざまな不都合が美容医療界には生じている．美容医療を他の医療と異なるものとして排除しようとする，これら行政や損保業界の姿勢が健全な美容医療の発展を阻害している．