腎交感神経による血圧・体液調節機序

Renal nerves mediated regulation of blood pressure and fluid balance

　遠心性腎交感神経の活性化は，レニン分泌促進，Na再吸収促進，腎血流低下による抗利尿作用の亢進に加え，さまざまなストレス・ホルモン・薬剤に対する利尿反応の変化やNa・水再吸収に関わる腎チャネル・トランスポーター発現の変化に関与している．他方で，求心性腎神経のシグナルは視床下部室傍核（PVN）へ入力し，全身への交感神経の出力を調整している．遠心性および求心性腎神経の不適切な活性化は血圧上昇や体液貯留をもたらし，交感神経活性化を背景とした高血圧や心不全病態を助長している．これらの神経性調節はノルエピネフリンのカテコールアミン受容体への直接作用に加え，レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系や脳内炎症免疫系，一酸化窒素を介した作用機序などが含まれる．腎除神経（腎デナベーション）は，中枢から腎臓への遠心路（出力）および腎臓から中枢への求心路（入力）を遮断することで交感神経活性化の悪循環を断ち，高血圧や心不全病態を改善することが期待される．