Japanese
English
連載 救急で出会ったこんな症例――マイナーエマージェンシー対応のススメ・Vol.5
節足動物による刺咬傷
-――虫に刺された! ムカデに刺された! 節足動物の刺咬傷の対処法
Arthropod stings/bites, from bugs/centipedes and how to effectively deal with these
田中 保平
1
Yasutaka TANAKA
1
1自治医科大学救急医学講座
キーワード:
ムカデ
,
アリ
,
ハチ
,
刺咬傷
,
アナフィラキシー
Keyword:
ムカデ
,
アリ
,
ハチ
,
刺咬傷
,
アナフィラキシー
pp.228-232
発行日 2023年4月15日
Published Date 2023/4/15
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28503228
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
◎近年は都市化が進んでいるとはいえ,われわれが自然と触れ合うことは少なくない.自然界では哺乳類は5,000種,節足動物は80万種といわれ,さらに数・質量的にも節足動物が圧倒している.さらに節足動物はわれわれの生活圏に深く浸透し生息しているため,節足動物による刺咬傷がなくなることはない.多くの節足動物は生息範囲を共有していながらも互いに不干渉で,遭遇してもヒトの存在や攻撃により逃避することが多いが,種類によってはヒトに対して逆襲・危害を加えることがある.日常診療で問題となる症状は,毒素による症状,傷からの感染症,さらにアナフィラキシーに大別される.節足動物は捕食のために毒を持つものは少なくないが,サソリやクモ類などの特定の種類を除けばその多くはヒトにとって微量な毒量あるいは毒の受容体の違いから大きな問題になることは少ない.局所の処置については,定型通り感染を予防するために十分な洗浄と刺針などの異物の残留に注意し,必要に応じて抗菌薬加療を加える.ただし,抗菌薬についての明確なエビデンスはない.また節足動物の毒は多岐多様にわたるが,その一部はタンパク質毒であるため,毒の多寡にかかわらずアナフィラキシーショックを発症する可能性は否定できない.ショックに至る場合はアドレナリンの筋肉注射を行うのが一般的な対応である.今回は紙幅の関係上からもすべての節足動物の刺咬傷について紹介することはできないため,筆者の好みと自験例を踏まえてムカデ,アリ,ハチに絞り,まれな症例報告も交えて紹介する.
Copyright © 2023 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.