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第5土曜特集 腫瘍免疫――免疫ネットワークから考える基礎と臨床
結語
がん免疫療法の展望
-――免疫制御機構に関する最近の知見をもとに
Prospects for cancer immunotherapy
坂口 志文
1
Shimon SAKAGUCHI
1
1大阪大学免疫学フロンティア研究センター実験免疫学
キーワード:
がん免疫応答
,
免疫自己寛容
,
免疫制御機構
Keyword:
がん免疫応答
,
免疫自己寛容
,
免疫制御機構
pp.563-576
発行日 2022年4月30日
Published Date 2022/4/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28105573
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最近のがん免疫療法の発展,とくに免疫チェックポイント抗体療法の開発により,がん免疫療法はがんの外科的摘除,化学療法,放射線療法に続く第4のがん治療法としての位置を占めつつある.しかし,現時点の免疫チェックポイント抗体療法の奏効率は,感受性の高いがん腫でも30%程度であり,また随伴する自己免疫病などの有害事象も無視できない.より強力で,より安全ながん免疫療法の確立が望まれる.そのために解決すべき根本的課題のひとつは,免疫自己寛容機構によるがん免疫応答の抑制である.すなわち,がん細胞に対する免疫応答は微生物免疫とは異なり,正常自己細胞由来の自己抗原,あるいは変異自己抗原に対するものであり,当然のことながら,生体に備わった免疫自己寛容維持機構は自己免疫病の発症のみならず有効ながん免疫応答を阻害する方向に働く.微生物ワクチンと比べて,治療的がんワクチンの有効性が低い原因のひとつと考えられる.逆に,免疫チェックポイント抗体療法,たとえば抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)や抗PD-1抗体(ニボルマブ)によるがん免疫応答の惹起・強化は,同時に免疫自己寛容を障害し,有害事象として自己免疫病を誘導する.本稿では,免疫自己寛容とがん免疫に関する最近の知見をもとに,がん免疫応答の制御機構を解説し,現行のがん免疫療法の問題点とその解決に向けた展望を述べたい.
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