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特集 新規心不全治療薬の使い方
SGLT2阻害薬
Sodium-glucose co-transporter-2(SGLT2)inhibitors
佐野 元昭
1
Motoaki SANO
1
1慶應義塾大学医学部循環器内科
キーワード:
近位尿細管
,
低酸素
,
交感神経系
,
レニン-アンジオテンシン系
,
ヘマトクリット
Keyword:
近位尿細管
,
低酸素
,
交感神経系
,
レニン-アンジオテンシン系
,
ヘマトクリット
pp.275-279
発行日 2021年4月24日
Published Date 2021/4/24
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27704275
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糸球体で濾過された糖の90%は,近位尿細管起始部(S1分節)でNa+依存性グルコース輸送体sodium-glucose co-transporter-2(SGLT2)により再吸収されている.SGLT2阻害薬は,SGLT2の働きを抑え,尿への糖排泄を促進させることによって糖尿病患者の血糖値を下げる薬として開発された.糖尿病患者を対象に行われた安全性評価試験において,SGLT2阻害薬が3-point MACE,すなわち非致死性心筋梗塞,非致死性脳梗塞,心血管死の複合エンドポイントを減少させる結果が示された.しかし,この新規糖尿病治療薬が糖尿病専門医のみならず,循環器内科あるいは腎臓内科専門医の注目の的となったのは,心不全入院を減少させ,腎機能の経年的な低下速度を抑えていた事実である.これらの有益な心腎保護効果は,血糖値の改善とは無関係であることが明らかとなり,その後,左室収縮機能が低下した症候性心不全患者を対象とした臨床試験において,糖尿病の有無にかかわりなく,心不全の予後を改善することが示され,その効能・効果の対象が慢性心不全へと拡大された.本稿では,SGLT2阻害薬が糖尿病や心不全の存在下に心腎保護効果を発揮する分子機序を,「SGLT2阻害薬は腎臓への負担を軽減し,交感神経の過剰活性化を減少させることで心不全のリスクを低減する」という視点から考察してみたい.
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