Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
褥瘡は,自重による圧迫が原因の創傷である.原因が圧迫なので,治療のためにもっとも重要なのは圧迫の解除である.30分ごとの体位変換は通常不可能なので,高機能体圧分散寝具(高機能エアマットレスまたはポリウレタンフォームマットレス)の使用が推奨される.表に体圧分散寝具の選択基準を示す.OHスケールは,すべての患者の入院時にナースが使用している(入院基本料の算定条件).褥瘡がすでに発生している場合は,体圧分散寝具を1ランクアップする.実際の臨床では,ほとんどの褥瘡患者が高機能体圧分散寝具使用の適応となる.
褥瘡の診断は自明のように思われる.しかし,原因を考慮せずに,臀部にできたすべての傷を「褥瘡」としている医療,介護関係者は多い.皮膚科医ならば,臀部にできる皮膚病変の多くは,おむつかぶれ(便,尿による刺激性皮膚炎),カンジダなどの感染症,おむつのよれによる擦り傷など,褥瘡以外のものが大多数を占めることを常識として知っている(図1).これらの病変の治療は,褥瘡の治療とは異なる.好むと好まざるとにかかわらず,褥瘡の診断,治療には皮膚科医が介入せざるを得ない.
栄養も(当然)重要である.寝たきり状態で,身体活動のカロリー消費が少なくても,創修復のための栄養要求は増大している.体重あたりの必要カロリー,蛋白量が,成人の平均摂取量を上回ることもまれではない.
これらのことは,褥瘡治療の基本ではあるが,この項の主題から外れるので,日本皮膚科学会『褥瘡診療ガイドライン』を参照していただきたい1).図2に褥瘡診療のアルゴリズムを示す.
なお,自重によらない圧迫創,たとえば弾性ストッキング,チューブなどの圧迫によって生じた創傷(医療関連機器圧迫創傷,medical device-related pressure ulcers:MDRPU),関節拘縮による趾間,手掌などの潰瘍は,「褥瘡」ではないので,本稿では触れない.
(「はじめに」より)
Copyright © 2020, KYOWA KIKAKU Ltd. All rights reserved.