特集 医療安全と事故・紛争対応への実際
事故対応
医療事故の判断と調査
田畑 雅央
1
Masao Tabata
1
1東北大学病院医療安全推進室
pp.1065-1069
発行日 2025年10月25日
Published Date 2025/10/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001342
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
医療事故調査制度は2014年6月に成立した医療法の改正に盛り込まれた制度で,2015年10月から施行された。医療事故調査制度は医療法の「第3章 医療の安全の確保」に位置づけられている。医療法第6条の10で「病院,診療所又は助産所(以下,この章においては「病院等」という)の管理者は,医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し,又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて,当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるものをいう。以下,この章において同じ)が発生した場合には,厚生労働省令で定めるところにより,遅滞なく,当該医療事故の日時,場所及び状況その他厚生労働省令で定める事項を第6条の15第1項の医療事故調査・支援センターに報告しなければならない」と定められており,また第6条の11で「病院等の管理者は,医療事故が発生した場合には,厚生労働省令で定めるところにより,速やかにその原因を明らかにするために必要な調査(以下,この章において「医療事故調査」という)を行わなければならない」と規定されている。本制度は,医療の安全と再発防止を目的とし,医療機関が自主的に原因を調査・究明することを基本としている。その根幹は,個々の医療従事者の責任追及ではなく,得られた知見を基に再発防止策を講じる点にある。医療現場において予期せぬ死亡・死産事例に直面した際,医療機関の管理者は,本制度に基づき,それが「医療事故」に該当するか否かを判断し,該当する場合には速やかに医療事故・調査支援センター(以下センター)に届けて院内調査を行うことが医療法で求められている。

© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.

