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Case
患者:85歳、男性
既往歴:慢性心不全、慢性腎不全
病歴:妻との2人暮らし。慢性心不全のコントロール目的に当院循環器内科に定期的に通院していた。某日発熱を主訴に予約外受診し、肺炎像を認めた。体温38.2℃、SpO2 85%(room air)、血圧162/90mmHgと低酸素血症を認め、緊急入院。酸素投与が開始されO2 3L/分吸入下でSpO2 95%、血液培養および痰培養を提出後、抗菌薬による加療が開始された。入院時、急変時の対応について家族に意向を伺ったところ「人工呼吸器装着は希望しない」ということであり、急変時蘇生措置拒否(DNAR)の方針となった。
入院第2病日も38℃以上の発熱が続き、呼吸は促迫しており、血圧は高めに推移していたため、モニター装着を指示した。
入院第3病日午前6時に看護師により抗菌薬の点滴を施行。午前7時頃、他患者に処方された抗菌薬はないが本患者の抗菌薬がナースステーションに残っていることに看護師が気づき、慌てて本患者を訪室するもバイタルに大きな変化を認めなかった。当直医師に報告し、医療安全責任者や主治医の出勤を待ってから患者説明や対応を相談することとなった。
午前8時50分、モニターアラームが鳴り訪室したところ、心肺停止の本患者を発見した。心臓マッサージを開始し、主治医に連絡した。午前8時53分、主治医が到着し急変時DNARの意向であることから、救急救命処置の中止を指示した。妻に連絡し、妻の到着を待って午前9時48分に死亡確認とした。抗菌薬の取り違いが起こったこと、基礎疾患のある高齢者の肺炎であり入院時より重篤であったことを説明したところ、妻から「これまでよくしてもらいましたし、入院時から覚悟をしていました。特に病院に不満はありません」と言われたため、死因を「細菌性肺炎」とした死亡診断書を発行した。
医療安全責任者から、医療事故調査のための解剖を勧めなくてよかったのかと尋ねられたため「遺族が納得しているものをわざわざ解剖しても、問題が大きくなるだけ」と答えたが、心中はこの対応でよかったのか不安だった。
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