特集 先天性囊胞性肺疾患診療ガイドライン
先天性囊胞性肺疾患診療ガイドライン作成にあたって
黒田 達夫
1
,
渕本 康史
2
,
野澤 久美子
3
,
松岡 健太郎
4
,
廣部 誠一
5
,
臼井 規朗
6
Tatsuo Kuroda
1
,
Yasushi Fuchimoto
2
,
Kumiko Nozawa
3
,
Kentaro Matsuoka
4
,
Seiichi Hirobe
5
,
Noriaki Usui
6
1慶應義塾大学小児外科
2国際医療福祉大学小児外科
3神奈川県立こども医療センター放射線科
4東京都立小児総合医療センター病理診断科
5東京都立小児総合医療センター外科
6大阪府立母子医療センター小児外科
pp.112-115
発行日 2022年2月25日
Published Date 2022/2/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000031
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はじめに
先天性囊胞性肺疾患は代表的な小児呼吸器外科疾患であり,旧来は幼児期に肺炎を反復することから診断され,病変を含む肺葉切除が行われる症例が多かった。近年では出生前診断技術の進歩と普及によって多くの先天性肺疾患は出生前に診断され,一部は胎児水腫や生直後の重篤な呼吸障害を呈して周産期死亡に至ることがわかってきた。一方で成人症例の増加により,術後晩期の成人期においてもいろいろな問題を呈する場合があることが知られるようになった。日本小児呼吸器外科研究会では,以前から先天性囊胞性肺疾患の分類が曖昧であることが指摘されていたことより,小児外科医の他に小児呼吸器科医,小児病理医,小児放射線科医など多領域の参加するワーキンググループを発足させて,出生前診断例まで含めた視点での疾患の整理と分類の見直しを行ってきた。さらに厚生労働科学研究事業の一環として研究会参加施設を対象に全国調査を行い1,2),これらを基に先天性囊胞性肺疾患の診療ガイドライン案がまとめられた。ガイドラインの策定にあたっては,本症の分類,出生前評価,生後評価,外科治療,術後合併症に関する10個のクリニカルクエッションを設定し,PubMedおよび医学中央雑誌から英文・和文ののべ1,042編の論文を一次検索した。うち228編の論文を抽出して検討し,上記全国調査結果と合わせて表1のようにガイドライン案を策定した。この診療ガイドラインでは,わが国における臨床を前提に,旧来の幼児期を中心の視点のみでなく,本症の出生前から成人期に至る生涯性の視点で臨床像を明らかにし,標準的推奨治療をまとめることを目指した。
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