特集 入門! アタッチメントと小児期逆境体験を知る
アタッチメントと小児期逆境体験を知る
小児期逆境体験による脳の変化
滝口 慎一郎
1,2
TAKIGUCHI Shinichiro
1,2
1McLean Hospital, Harvard Medical School, Department of Psychiatry
2平谷こども発達クリニック
pp.863-867
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002467
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はじめに
子どものこころとからだの発達にはバランスの整った栄養と良質な睡眠・運動に加え,養育者との情緒的な絆(アタッチメント)が不可欠である。養育者が子どもの安全基地となるよう接することで,子どもは養育者に慰めや助けを求めて不安や危機を回避し,安心・安全を確保しながら行動調整できるようになる。この経験により,子どもの運動・感覚・言語機能,安心感や対人信頼感の基盤が形成され,認知・情動・社会性の発達も促進される。しかしながら,児童虐待(身体的・心理的・性的虐待,ネグレクト)や養育者との離別(離婚など),家族の機能不全(家庭内暴力・精神疾患・薬物/アルコール依存など)といった小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences:ACEs)は,身体への影響のみならず,こころの発達の基盤となる脳の成長を妨げ,子どもの認知・情動面・社会性の獲得に長期的に悪影響を与えることが報告されている1,2)。

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