特集 いまさら聞けない成長のキホン
各論
成長をめぐる諸問題 成長ホルモン治療の進歩と問題点
松井 克之
1
MATSUI Katsuyuki
1
1滋賀県立小児保健医療センター内分泌代謝糖尿病科
pp.1683-1688
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002128
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
進歩
1.成長ホルモン治療の歴史
成長ホルモン分泌不全症(GHD)に対する成長ホルモン(GH)治療の歴史を中心に記載する1)。ヒト成長ホルモン(hGH)は主に下垂体前葉の分泌細胞(somatotroph)から分泌される,191アミノ酸からなる22 kDaのペプチドホルモンであり,1957年に保存された下垂体から初めて抽出された。翌年にはGHDをもつ17歳男子に対して行われた下垂体抽出ヒト成長ホルモン(phGH)治療が報告されている。日本では1960年に死体下垂体の収集,phGHの抽出が開始され,1962年にはphGHによる治療成果が報告された。その後,日本で収集された死体下垂体は米国に送られてphGHが抽出され,GHDの治療に用いられた。1963年にスウェーデンのKabi社によって開発された下垂体抽出ヒト成長ホルモン製剤Crescormon®は,1975年に日本で初めて保険薬として収載された。本製剤は筋肉注射であり,0.5 IU/kg/週の量を週2~3回に分けて投与されたが,1981年までは自己注射が認められておらず,通院での治療が必要であった。また,phGHの供給量に限りがあったため,1973年に厚生省の研究班が組織され,治療対象者の適応判定が行われるようになった。さらに1977年には財団法人成長科学協会が設立され,下垂体収集事業が行われた(後に適応判定事業もここに移管された)。それにもかかわらず,常に数百人がGH治療を待機する状況が継続した。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.