特集 小児の渡航医学
各論
渡航前の相談
防蚊対策
中野 沙季
1
NAKANO Saki
1
1東京臨海病院小児科
pp.919-922
発行日 2024年6月1日
Published Date 2024/6/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001710
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はじめに
蚊は全世界に3000種以上存在し,そのうちヒトに吸血嗜好性を示す蚊が,さまざまな疾患をひき起こす病原体を媒介している。代表的な蚊媒介感染症には,マラリア(ハマダラカ属が媒介),デング熱,チクングニア熱,ジカ熱,黄熱(ヤブカ属が媒介),ウエストナイル熱,日本脳炎(イエカ属が媒介)などがある。世界では,年間約2億4900万人がマラリアに感染し,うち60万人が死亡している1)。世界の人口の約半分がデング熱の感染リスクのある地域に居住し,4億人が感染,4万人が重症型デング熱で死亡していると推定されている2)。世界では,これだけ多くの人が日常的に蚊媒介感染症の危険にさらされている一方で,日本国内では日本脳炎の報告が年間最大10例程度3)にとどまり,蚊媒介感染症は非常にまれである。このため,日本で生活する私たちにとって蚊は刺されると痒くて煩わしいだけの存在にすぎない。蚊媒介感染症が流行しているのは,主に熱帯,亜熱帯地域であり,旅行や駐在で日本人が子どもを連れて多く訪れる東南アジア諸国も蚊媒介感染症の流行地域の一つである。これらの地域のなかには,複数の蚊媒介感染症が同時に流行しているところも多く,すべての蚊媒介感染症から身を守るためには,“蚊に刺されないようにすること” が重要である。
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