特集 小児の移植医療
同種造血細胞移植
造血細胞移植患者の長期フォローアップ
下村 麻衣子
1
,
川口 浩史
1
SHIMOMURA Maiko
1
,
KAWAGUCHI Hiroshi
1
1広島大学病院小児科
pp.852-856
発行日 2023年5月1日
Published Date 2023/5/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000922
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はじめに
近年の移植件数の増加と移植法や支持療法の進歩による移植成績の向上に伴い,造血細胞移植(hematopoietic cell transplantation:HCT)後の長期生存者が年々増加している。主に成人領域ではHCT後の晩期合併症について明らかになってきており,HCT生存者の平均余命は,移植後10~30年を経過しても一般集団に比較すると短い。一方で,小児期HCT症例は身体的・精神的に成長途上で強度の高い治療を受けるため,成人期HCT症例よりも移植医療の影響が大きくなることが予想されるが,国内において実態を明らかにした報告は少ない。小児期HCT症例は成人期に達した後,成人診療科と連携して長期フォローアップ(long-term follow up:LTFU)を行う必要があるが,造血障害や免疫不全症などの小児特有の疾患や,発育・発達に関連した晩期合併症を認めることもあり,それに伴う心理・社会的な問題に対する対応も必要となる。現在,国内外でLTFUガイドラインが作成されている。今後,小児・AYA(思春期・若年成人)世代のHCT症例における晩期合併症スクリーニングや,移行期医療に適したプラットフォームの構築,LTFU体制の整備と均てん化,そして患者への早期からの健康教育が課題である。
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