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米国における小児医薬品開発規制とResearch to Accelerate Cure and Equity for Children Act(RACE法)成立の背景
米国では2000年代から小児用医薬品開発を促進するための政策がとられてきた。2002年のBest Pharmaceuticals for Children Act(BPCA)では,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)が発行した臨床試験実施要請(written request)に記載されている小児臨床試験を自発的に行い完了するスポンサーに対して,追加の販売独占権を与えるというインセンティブが与えられた。また,2003年のPediatric Research Equity Act(PREA)では,相当数の小児に使用されることが予想される場合に,成人と同じ適応症について小児を対象とした試験を完了するよう製薬業者に要求する権限がFDAに与えられた。具体的には,PREAは,新有効成分,新適応症,新剤形,新投与法,新投与経路を含む試験について,第3相試験を開始する前,あるいは第3相試験がない場合は新薬申請書(new drug application:NDA)・生物学的製剤承認申請書(biologic license application:BLA)の提出前に,初回小児臨床試験計画(initial pediatric study plan:iPSP)の提出を義務づけた。iPSPには,提案された適応症に対する治験薬の安全性と有効性について,すべての関連する小児の部分集団における評価が含まれることが求められているものの,特定の状況下では小児試験の実施に対する猶予,または小児試験の免除を受けることができる。上皮性のがんなどの成人に多いがん種のほとんどは小児には少ないことから,がん領域での治療薬開発においては小児試験の免除を受ける結果となり,小児集団での試験はほとんど行われなかった。また,がんの種類が多く,一つひとつのがん種の患者数の少ない小児がんは米国でも希少疾患であるため,希少疾患としてオーファン指定を受けることで,PREAの要件が適用されなかった。結果として,2003年にPREAが制定されて10年以上経過しても,PREAの下での抗悪性腫瘍薬に関する小児の試験がFDAから要求されたことはなく,すべての試験が免除,またはオーファン指定を受けていた。小児用医薬品開発を支援すべく制定されたPREAは腫瘍以外の小児の臨床分野では効果的であったのに対し,腫瘍分野ではほとんど効果を上げていなかった。
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