特集 成人患者における小児期発症慢性疾患
成人期における主な小児期発症疾患の病態・管理
神経・筋疾患 てんかん
中川 栄二
1
NAKAGAWA Eiji
1
1国立精神・神経医療研究センター病院てんかん診療科,脳神経小児科
pp.1562-1567
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000394
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はじめに
医学の進歩により小児神経慢性疾患患者の多くが成人期に達し,その多くは合併症や遺残症を伴い継続的な医療が必要である。疾患を有する小児が生涯にわたりもてる機能と能力を最大限に発揮できるよう小児期医療から成人期医療への円滑な橋渡しを行うのが移行期医療である。単なる転科にとどまらず,年齢や理解度に応じた本人への説明や,セルフケアの確立に向けた患者教育を早期から開始することが大切である。医学的なことのみならず,進学・就職や社会保障制度の切り替えについても患者個人で解決するには苦労が大きく,必要に応じて専門的な支援が必要である。わが国では,2000年代から小児科のさまざまな領域で移行医療が検討されるようになった。2013年,日本小児科学会は「小児期発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言」を発表し,小児慢性特定疾病事業にかかわる疾患のみならず,小児科の全領域,全疾患において移行医療を進めるとした。その後,厚生労働省は「慢性疾患を有する児の社会生活支援や療養生活支援に関する実態調査およびそれら施策の充実に関する研究」班を立ち上げ,2018年4月から全国の都道府県で都道府県移行期医療センターを開設し現在にいたっている。日本小児科学会の複数の分科会では,移行期対応委員会などを設置して移行期医療の提言を作成している1,2)。
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