特集 ローリスク妊婦ローリスク新生児のケア2025
分娩時の母体と新生児のケア:母体
分娩第3期から分娩後2時間までの管理
長澤 亜希子
1
,
尾本 暁子
1
NAGASAWA Akiko
1
,
OMOTO Akiko
1
1千葉大学医学部附属病院産科・婦人科
pp.72-76
発行日 2025年1月10日
Published Date 2025/1/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001995
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はじめに
分娩第3期は胎児娩出後から胎盤娩出まで,その直後から産後2時間までは分娩第4期といわれ,この期間は母体の回復と産後の安全管理において非常に重要な時期である。胎盤剝離により剝離面から子宮内・体外への出血が起こるが,子宮収縮により子宮筋層内の血管収縮が起こるために外出血が減少し,子宮筋層に貯留していた血液が母体循環に戻ることで血液循環は保たれ,大きく生命に関わることは少ない。ただし,この出血と還血のバランスが崩れて致命的な状況となることはローリスク妊娠でも稀ではない。実際,妊産婦死亡の第一原因は産科危機的出血である。また,初発症状出現の7%は分娩第3期,16%は第4期であり1),この時期の出血に対する管理がきわめて重要である。分娩後異常出血(postpartum hemorrhage:PPH)の原因は,4Ts〔tone(子宮収縮不良),trauma(産道外傷・血種・子宮内反など),tissue(組織遺残),thrombin(血液凝固異常)〕といわれており,疾患としては弛緩出血,産道裂傷,組織遺残,前置胎盤,癒着胎盤,子宮内反症,羊水塞栓症などさまざまである。心疾患合併妊娠や妊娠高血圧症候群などの妊娠時から循環に異常のあるハイリスク妊娠では,出血が多くなくてもこの時期の循環動態の変化への適応が問題となることがあるが,本稿ではローリスク妊娠を対象とするため,分娩第3期およびその後2時間の管理として,PPHの予防と対応に焦点を当てて述べる。
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