特集 産科医療補償制度15年でみえてきたもの―脳性麻痺の原因分析と再発防止策
各論
脳性麻痺の原因と再発防止 3.新生児管理 生後5分まで新生児蘇生処置が不要であった事例の新生児管理
山南 貞夫
1
YAMANAMI Sadao
1
1川口市立医療センター小児科
pp.120-126
発行日 2024年1月10日
Published Date 2024/1/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001414
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はじめに
脳性麻痺の原因の多くは分娩前から分娩中に起こった胎児低酸素症・酸血症による中枢神経の障害であり,出生時には低Apgarスコアや臍帯動脈血ガス所見で酸血症を認め,ただちに蘇生が行われるのが普通である。一方,5分以内のApgarスコアが7点以上であり,産科医療補償制度の事例分析の記載で,出生直後に皮膚刺激や酸素投与以上の積極的な蘇生(人工呼吸,胸骨圧迫,気管挿管,アドレナリン投与)の必要がなかったと判断される児においても,その後の経過で急速に悪化して脳性麻痺に至る事例,あるいは出生後の経過に特別な異常がなく,通常に退院したにもかかわらず乳児検診などでフォローするうちに脳性麻痺が明らかになる事例などがみられる。一見問題なさそうにみえても,新生児期は胎内から胎外へと環境が移行する不安定な時期であることを念頭に置いた対応が必要である。同原因分析報告書1)によれば,事例793件のうち,生後5分まで新生児蘇生処置が必要なかったにもかかわらず脳性麻痺となった事例は188件(23.7%)であった。
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