特集 産科医療補償制度15年でみえてきたもの―脳性麻痺の原因分析と再発防止策
各論
脳性麻痺の原因と再発防止 1.妊娠・分娩管理 子宮底圧迫法(クリステレル胎児圧出法)
竹田 純
1
TAKEDA Jun
1
1順天堂大学産婦人科学講座
pp.59-61
発行日 2024年1月10日
Published Date 2024/1/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001401
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はじめに
子宮底圧迫法は経腟分娩時に娩出力を高めることを目的として用手的に子宮底を圧迫し児の娩出を促す手技である。特別な準備を必要としないこともあり,さまざまな場面で行われており,76の研究をメタ解析した論文ではその実施率は23.2%1)と,わが国の帝王切開率や器械分娩率よりも高い可能性がある。オリジナルの方法はExpressio fetusとよばれ,1867年にSamuel Kristellerが提唱した方法である。産道の長軸方向へ子宮底をマッサージし短時間のうちに何回も子宮底を押すことによって分娩中の子宮収縮を強めるという方法であった2)。しかし,このオリジナルの方法から徐々に変化があり,それぞれ独自の方法で子宮底圧迫が行われてきたこと,また,さまざまな合併症のリスクがあることから,そもそもこの手技の是非についても議論がある。改めてこの子宮底圧迫法について考えると,その定義は産科婦人科用語集・用語解説集に「急速遂娩法の一方法」とある。産婦人科診療ガイドライン産科編20233)では子宮底圧迫法に関する記載は吸引・鉗子娩出術と同じクリニカルクエスチョンにまとめられ,それまでの版より急速遂娩術の一方法であることが強調されるようになった。しかし,実臨床の場において子宮底圧迫法は器械分娩と異なり漫然と実施されていることもあり,その結果として,子宮底圧迫法に起因する有害事象の発生も報告されている。本稿では,子宮底圧迫法を実施するうえで注意する点を含め解説する。
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