特集 産科医療補償制度15年でみえてきたもの―脳性麻痺の原因分析と再発防止策
各論
脳性麻痺の原因と再発防止 1.妊娠・分娩管理 遷延分娩
田中 宏和
1
TANAKA Hirokazu
1
1香川大学周産期学婦人科学
pp.62-65
発行日 2024年1月10日
Published Date 2024/1/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001402
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緒 言
遷延分娩の定義は,「分娩開始後すなわち陣痛周期が10分以内になった時点から,初産婦では30時間,経産婦では15時間を経過しても児娩出に至らないものをいう」と規定されている。初産婦で分娩所要時間が30時間をこえると,急速遂娩術(吸引・鉗子分娩・帝王切開術),胎便による羊水混濁や新生児仮死が有意に増加する。また,経産婦では分娩所要時間が15時間をこえると急速遂娩術および新生児仮死の頻度が有意に増加することが指摘されている1)。分娩経過の異常には遷延分娩のほかに分娩停止がある。分娩停止は,「一度は陣痛が発来して分娩が進行していたが,それまで同様の陣痛が続いているにもかかわらず,2時間以上にわたって分娩の進行(子宮口の開大や児頭の下降)が認められない状態」と定義され,児頭の回旋異常による低在横定位や骨盤峡部CPDなどが原因になることが多い1)。遷延分娩と分娩停止は合併することも多く,第8回産科医療補償制度再発防止に関する報告書(2018年)では,脳性麻痺発症事例で遷延分娩が確認された37例中13例(35.1%1)が分娩停止も伴っていた2)。いずれも分娩進行が障害されたものであり,原因も共通することから同様の対応を要することが多く,一連の流れとして理解する必要がある。
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