増刊号 周産期診療のための病態生理
[新生児編]
中枢神経系
早産児の中枢神経系の発達は胎児と異なっているのか
城所 博之
1
,
白木 杏奈
1
KIDOKORO Hiroyuki
1
,
SHIRAKI Anna
1
1名古屋大学医学部小児科
キーワード:
早産児
,
脳発達
,
MRI
Keyword:
早産児
,
脳発達
,
MRI
pp.318-320
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001304
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基本病因,発症機序,解剖学的背景
胎生期の脳の発達現象は,遺伝子発現や細胞レベルの生化学的反応などによって精密に調整・制御されている。特に,妊娠後期の脳の発達はダイナミックである(表)。一方,胎生期はさまざまなストレスに対して脳が負の影響を受けやすい特異的時期でもある。早産児(特に在胎32週未満の児)は,中枢神経系が発達途上の未熟な状態で出生し,NICUというストレスの多い環境に曝される。呼吸・循環の不安定性がもたらす低酸素・虚血性ストレス,痛みの多い環境,低栄養,鎮静薬を含む現行の薬剤治療など,さまざまな要因が未熟な脳の構造や機能に多様な変化をもたらし,将来の運動や認知,行動予後に影響を与える1)。早産児に起こり得る特に重要な脳障害は,この時期の白質の主要な構成成分であるミエリン形成前オリゴデンドログリア(Pre-OL)の選択的脆弱性に起因する白質障害である。しかし,近年は白質障害に加えて,大脳皮質や深部灰白質,小脳,脳幹も一次的・二次的に影響を受けることで,早産児特有の複雑で多様な脳障害をきたすと考えられており,“encephalopathy of prematurity”(未熟児脳症)と称される2)。
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