増刊号 周産期診療のための病態生理
[産科編]
妊娠合併症
妊娠高血圧症候群での凝固線溶系はどこまでわかっているか
植木 典和
1
,
牧野 真太郎
1
UEKI Norikazu
1
,
MAKINO Shintaro
1
1順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科
キーワード:
preeclampsia
,
血管内皮障害
,
血液凝固障害
,
抗凝固療法
Keyword:
preeclampsia
,
血管内皮障害
,
血液凝固障害
,
抗凝固療法
pp.67-70
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001241
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Preeclampsiaと血液凝固障害
“Obstetrics is a bloody business” と表されるように出血は分娩に付随する。出血から母体を守るため,妊娠中は凝固能亢進に傾きながらも,線溶系と絶妙な均衡を保っている。この保護的な凝固能亢進が妊娠高血圧腎症(preeclampsia:PE)を有する妊婦では,血管内凝固,微小血管血栓症や子宮胎盤循環障害と関連し,血液凝固障害はPEの診断基準にも含まれている。PEの発症機序として “two-stage theory” が広く知られ,“1st stage” は子宮らせん動脈への絨毛外トロホブラスト(extra-villous trophoblast:EVT)の浸潤不全(らせん動脈リモデリング不全)である。それにより十分な子宮胎盤血流が維持できず,低酸素状態を惹起する。低酸素状態が抗血管新生因子や炎症性サイトカインを過剰産生させ,血管内皮細胞障害を起こす “2nd stage” につながる。本稿ではpreeclampsiaと抗凝固療法を関連づけて凝固線溶系について述べる。
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