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多くの心疾患合併妊娠は母児ともに安全に経過し,終了する。これは性成熟期の女性がもつ心疾患の多くが妊娠に耐えうるものであることと,良好な妊娠予後が期待できない場合,妊娠を事前に回避しているということによる。たとえば肺高血圧(Eisenmenger症候群),流出路狭窄(大動脈弁高度狭窄 平均圧>40~50mmHg),心不全[New York Heart Association(NYHA)分類 classⅢ~Ⅳ,左室駆出率(left ventricular ejection fraction;LVEF)<35~40%],機械弁,チアノーゼ性心疾患,Marfan症候群でバルサルバ洞径が40mm以上などは,ガイドラインであらかじめ妊娠の際に厳重な注意を要する,あるいは妊娠を避けることが強く望まれる心疾患として挙げられており1),医療者から妊娠を勧めることはなく,妊娠の回避が指導される。妊産婦死亡の観点からみると,まず,わが国における総妊娠数の2~3%は心疾患女性の妊娠で,心血管系の合併症が原因で発生する妊産婦死亡は約9%である。これは全妊娠に占める比率より高く,心疾患合併妊娠がハイリスク妊娠であることは間違いない。しかし,死亡例の多くは解離性大動脈瘤のような血管疾患,心筋症,心筋炎や心筋梗塞のような心筋障害,そして致死性不整脈であり,先天性心疾患を背景とする妊産婦死亡は必ずしも多くない。日本産婦人科医会と妊産婦死亡症例検討会の報告2)では2010年から2016年に発生した妊産婦死亡266例の解析を行い,心血管系が死亡原因であったのは24例,先天性心疾患を背景とするのは心内膜床欠損の1例とQT延長症候群の2例のみであった。つまり,先天性心疾患は現状,妊産婦死亡に大きなインパクトを与えてはいない。本稿ではまず成人先天性心疾患女性の妊娠の適応について述べるが,その裏側にある回避すべき病態から適応を考えてみたい。「KEY WORDS」心疾患合併妊娠,妊娠,ハイリスク妊娠,先天性心疾患,成人先天性心疾患
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