特集 周産期医療のヒヤリ・ハット―医療事故・医療紛争を防ぐために 新生児編
各論
医薬品・輸血に関するもの 母乳の取り違え
水野 克己
1
MIZUNO Katsumi
1
1昭和大学医学部小児科学講座
pp.1085-1088
発行日 2023年7月10日
Published Date 2023/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001012
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はじめに
どのNICUにおいても,母乳の処理作業は日々取り扱う業務である。母乳は,超早産児に対しては壊死性腸炎,慢性肺疾患,未熟児網膜症,後天性敗血症など多くの疾患における罹患率を低下させるため,単なる栄養ではなく「くすり」としての役割も有する。その一方で,母乳は体液であり,サイトメガロウイルス感染,B群溶血性レンサ球菌(GBS)感染,また,もらい乳が関係した多剤耐性菌の伝播の報告も散見される。母乳を1回取り違えたとしても,それだけで経母乳感染が起こるとは考えにくいが,患児家族に与える不安は大きく,その後の信頼関係にも関わる。NICUにおけるヒヤリ・ハットの一つとして母乳の取り違えはどのNICUでも起こりうることであり,重要なテーマである。
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