特集 見て,聞いて,触って,身体所見から考える妊産褥婦の異常とその対応
下腹部が痛い
米田 哲
1
YONEDA Satoshi
1
1富山大学学術研究部医学系産科婦人科学教室
pp.1108-1110
発行日 2022年8月10日
Published Date 2022/8/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000275
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はじめに
妊娠中の諸症状は,いつも以上に気になるはずである。それが下腹部痛であれば,より心配であろう。妊娠子宮増大に伴う牽引痛(円靱帯の牽引に伴う)は生理的なものであり,経過を見ることしかできない下腹部痛もあれば,緊急性の非常に高い常位胎盤早期剝離(早剝),とくに内出血タイプによる下腹部痛もある。これらをできるかぎり早期に診断することは,まさに産科医の重要な責務であり,状況を速やかに理解し,必要な検査を実施し,診断に結びつけなければならない。そのためには,まず,「見て,聞いて,触って」という初期診療がきわめて重要であり,経験を積んだベテラン医師ほど,診断への嗅覚能力が長けてくるのも事実かもしれない。いわゆるfirst touchから,今,何が起きているのか? なぜ痛がっているのか? 早期診断,早期対応のためのノウハウについて考えてみたい。
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