特集 てこずった症例・難治症例にどう対応するか
頸部領域
甲状腺全摘出術前コントロールに難渋した甲状腺クリーゼ症例
伊東 明子
1
,
中屋 宗雄
1
Akiko Ito
1
,
Muneo Nakaya
1
1東京都立多摩総合医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科
キーワード:
甲状腺全摘出術
,
甲状腺クリーゼ
Keyword:
甲状腺全摘出術
,
甲状腺クリーゼ
pp.1139-1143
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000001271
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はじめに
「甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017」1)では,「甲状腺クリーゼ(Thyrotoxic storm or crisis)とは,甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患が存在し,これに何らかの強いストレスが加わった時に,甲状腺ホルモン作用過剰に対する生体の代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果,生命の危機に直面した緊急治療を要する病態」と定義されている。かつてはバセドウ病の甲状腺亜全摘術後に発症する外科的甲状腺クリーゼが多かったが,術前の甲状腺機能コントロールが厳格にされるようになった現在,内科的甲状腺クリーゼがほとんどであり2),未治療や治療中断が多くを占める3)。甲状腺クリーゼの鎮静化後には再発予防の観点から,甲状腺全摘術の適応になる症例も多いが,術前管理は救命と全身状態の安定化が最優先される。
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