顎下腺腫脹―がん，良性腫瘍，炎症などの鑑別

はじめに

　顎下腺の腫脹や腫瘤の訴えは，日常的な耳鼻咽喉科診療でよく出会う主訴である。顎下部の腫脹の原因としては顎下腺炎や頸部リンパ節炎などの炎症，そして免疫異常に伴う唾液腺疾患と腫瘍性疾患に大別される。また顎下腺由来の病変が多いが，時に顎下部のリンパ節腫大が原因であることもあり注意が必要である。口腔底に原因を有する場合や全身病変に伴う局所所見として顎下部腫脹を主訴とすることもあり，このような場合には問診や視触診が重要となることも多い。顎下腺腫瘍は耳下腺腫瘍に比して悪性の可能性が高く，その点にも注意を払って診療を進めるべきである^1,2）。