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特集 病理からせまる腎疾患の病因・病態解明
特殊技術を駆使した腎疾患の病態解明
腎生検のトランスクリプトミクス
Transcriptomics of renal biopsies
山本 格
1
YAMAMOTO Tadashi
1
1新潟大学医歯学総合研究科 生体液バイオマーカーセンター
キーワード:
トランスクリプトミクス
,
レーザーマイクロダイセクション
,
In situ hybridization
Keyword:
トランスクリプトミクス
,
レーザーマイクロダイセクション
,
In situ hybridization
pp.479-482
発行日 2024年9月25日
Published Date 2024/9/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001474
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はじめに
腎生検は,腎臓病の病理組織診断のための重要な検査法であるだけでなく,その生検組織を病態解明などにも利用できると期待されている。生検組織を用いた病態解明の手法として,以前は,病態に関与すると仮説して蛋白質や遺伝子発現が組織にあるかどうかを,組織切片上で免疫組織化学法,免疫蛍光法,in situ hybridization(ISH)法などで1つずつ確認することなどが行われていた。その後,蛋白質や遺伝子を個々に検出するのではなく,網羅的に解析するプロテオミクスやトランスクリプトミクスが可能になり,組織から蛋白質や遺伝子を抽出し,それらを網羅的に検出,定量できるようになった。その結果,予想(仮説)しない蛋白質や遺伝子も含め,多数の蛋白質や遺伝子の組織内での増減情報が取得でき,その情報をバイオインフォマティクス解析することで,組織で起きている生物反応(パスウェイ)などが推定でき,病態解明が現実的になった。しかし,腎生検組織には多種類の細胞が含まれ,組織全体を解析する方法で得られたプロテオミクスやトランスクリプトミクス解析結果は,個別の細胞の蛋白質や遺伝子発現を反映しておらず,その結果から推定されるパスウェイ解析や病態解析などの信頼性は高くない。そのため,現状では,腎生検組織やネフロンごとに分画した組織のトランスクリプトミクスやプロテオミクスで得られた蛋白質や遺伝子発現の増減がどの細胞に起きているかについて,免疫学的手法やISH法で1分子ごとに細胞局在を調べるという検証が必要となる。
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