異種腎移植の臨床応用に向けた現状と展望

Recent advances in kidney xenotransplantation

はじめに

　異種腎移植は，臓器移植における臓器不足に対する有効な解決策として期待され，これまで動物実験を中心に精力的に研究されてきた。とりわけここ数年は，異種移植の臨床導入に向けた動きが米国を中心に活発化し，急速な進展をみせている。そして2024年3月，米国ボストンのマサチューセッツ総合病院（Massachusetts General Hospital：MGH）で，遂に世界ではじめて遺伝子改変ブタから摘出した腎臓が実際の腎不全患者に移植され，異種移植研究は新たなフェーズに足を踏み入れることとなった。本稿では，異種移植研究の臨床導入に至るまでの歩み，さらには今後の課題について解説していく。