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特集 異種移植の現状と展望
臨床応用可能な3種異種抗原ノックアウトブタを用いたサルへの異種腎移植の長期生着
Long-term renal xeno graft survival with porcine kidney of xenoantigen triple-knock out plus multiple human transgenes in nonhuman primates
広瀬 貴行
1,2
,
河合 達郎
1
Takayuki HIROSE
1,2
,
Tatsuo KAWAI
1
1マサチューセッツ総合病院移植外科
2北海道大学病院泌尿器科
キーワード:
異種移植
,
腎移植
,
異種抗原
Keyword:
異種移植
,
腎移植
,
異種抗原
pp.247-250
発行日 2022年10月22日
Published Date 2022/10/22
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28304247
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深刻な臓器ドナー不足に対して,ブタなどの動物を用いた異種移植に期待が高まっている.3種の主要な異種抗原を除去したブタ(TKO)はヒトへの異種移植に最適であり,臨床応用が期待されている.マサチューセッツ総合病院(MGH)のKawai研究室では,eGenesis社と共同してCRISPR/Cas9によるTKOと数種類のヒト遺伝子が移入された遺伝子改変ブタからの異種腎移植の成績を評価している.これまでにTKOに加えて,ヒトの補体制御タンパク,免疫抑制タンパク,凝固抑制タンパクを発現するヒト遺伝子を数種類ずつ組み合わせたブタ,そしてTKOのみのブタの評価を行った.導入免疫抑制剤としては移植時に抗胸腺グロブリン,抗CD20抗体(リツキシマブ)を投与した後,抗CD154抗体を毎週投与し,ミコフェノール酸モフェチルの経口投与を行った.また,ラパマイシンまたはタクロリムス(2カ月間)とステロイド(1カ月間)も短期間投与した.カニクイザルなどのいわゆる旧世界ザルはTKOに対する自然抗体価がヒトのそれよりも高いが,それにもかかわらず補体制御タンパクの発現が高いブタからの腎移植では6匹中3匹は100日以上,最長で316日生存した.TKOのみでヒト遺伝子移入を行っていないブタを用いると全例で50日以内に移植腎廃絶に至った.現在,より多様なヒト遺伝子を移入したTKOブタの腎移植を評価中であるが,さらに長期(600日以上)の生着も得られており,臨床応用への実現が期待される.
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