シリーズ最新医学講座 臓器移植・2
異種移植
今野 兼次郎
1
,
小林 英司
2
Kenjiro KONNO
1
,
Eiji KOBAYASHI
2
1自治医科大学分子病態治療研究センター 動物資源プロジェクト
2自治医科大学分子病態治療研究センター 臓器置換研究部
キーワード:
ドナー不足
,
遺伝子改変ブタ
,
免疫反応
Keyword:
ドナー不足
,
遺伝子改変ブタ
,
免疫反応
pp.213-217
発行日 2007年2月15日
Published Date 2007/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100430
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はじめに
移植医療は,20世紀に最も成功した革命的医療と考えられている.この医療の進歩により多くの回復不可能に陥った臓器不全の患者の命が救われた.しかし,最近では移植後のQOLの向上にも繋がり,皮肉なことに,移植医療の普及が新たな観点から移植臓器不足の深刻さを浮き彫りにしている.1997年10月にわが国で臓器移植法(臓器の移植に関する法律)が施行されたが,心臓移植患者数の推移を見ても海外で移植を受ける患者がむしろ増えている1).この事実を考えるにあたり,この臓器不足の問題は日本に限ったことではなく,移植先進国である欧米ではもっと深刻である.移植臓器不足が低開発国などへ臓器を求める動きを助長し,社会問題を起こしている.臓器移植の問題を補完するために再生医療にも研究の目が向けられ,世界各国で盛んに研究が進められているが,臓器移植に代わる治療までには至っていない.古くから人工臓器の研究も行われているが,複雑な機能や構造を持った臓器を人工のもので代替することは技術的に非常に困難である.この分野でも生きた臓器の代替えまでは,一部の人工臓器を除いて,実用化には至っていない.
移植臓器不足を解消すべく,ヒト以外の動物の臓器をヒトへ移植する「異種移植」が古くから注目されてきたが,前述の理由から,現在全く異なるレベルでの緊急性が出てきている.本稿ではまず,異種移植のドナー候補について基本的な点を述べ,それにかかわる問題点,さらに新しい試みを解説する.
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