高齢者の腎移植

Kidney transplantation in elderly patients

はじめに

　腎移植は末期腎不全患者の生存率とQOLを向上させる腎代替療法の1つである。新たな免疫抑制薬の登場とプロトコルの工夫により，最近の20年間で腎移植成績はさらに向上した。一方で日本社会の高齢化とともに腎代替療法を選択する患者の高齢化が進み，腎移植を希望する末期腎不全患者もまた高齢化が進んでいる。現行のガイドラインでは腎移植の適応に年齢制限はないが，高齢レシピエントにはさまざまな併存症が存在し，その適応の是非は慎重な判断が必要になる。つまり，腎移植の恩恵を十二分に享受できるか否かの評価が必要であり，それは医学的，技術的な適応だけでなく，高齢レシピエントの社会背景まで考慮する必要がある。Shared decision making（SDM）の潮流のなかで，何を目的に高齢者の腎不全医療を進めるか，その背景，注意点を概説する。