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特集 病因・病態生理から読み解く腎・泌尿器疾患のすべて
Ⅴ.AKI
9.熱中症によるAKI
Heat related illness-induced acute kidney injury(AKI)
後藤 洋康
1
,
大島 直紀
1
Goto Hiroyasu
1
,
Oshima Naoki
1
1防衛医科大学校病院腎臓内分泌内科
キーワード:
熱中症
,
急性腎障害
,
暑熱順化
Keyword:
熱中症
,
急性腎障害
,
暑熱順化
pp.384-387
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001061
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1 病因・病態
日本救急医学会では熱中症を「暑熱環境における身体適応の障害によっておこる状態の総称」と定義している1)。暑熱環境において体温中枢のセットポイント以上に体温が上昇すると,皮膚の毛細血管が拡張し,皮膚からの放熱により代償され体温が維持される。しかしながら,体温がこの代償機序を超えて上昇すると脱水,循環虚脱,末梢組織の低酸素,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)が惹起され,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC),多臓器不全を引き起こす2)。また,熱ストレスの直接的な臓器障害性も指摘されており,高体温が近位尿細管細胞のミトコンドリアを障害することが報告されている3)。その他,横紋筋融解症の発症や,高尿酸血症やフルクトース上昇などの代謝異常の関与も知られている4)。このように,熱中症による急性腎障害(acute kidney injury:AKI)は熱ストレスによる直接的・間接的な急性尿細管障害,腎血流量の低下,多臓器不全など複合的な要因が関与していると考えられる(図1)。
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