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1 病因・病態
Sjögren(シェーグレン症候群)(SjS)は,唾液腺・耳下腺・涙腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫性疾患である。SjSの発症機序は複雑ですべてが解明されているわけではないが,疾患感受性を増大させる遺伝的要因を背景に,ウイルス・細菌感染などの環境要因をトリガーとして発症すると考えられている。図1にSjS発症の概要を示す1)。腺上皮は「疾患の発症の場」であるとともに「惹起された自己免疫の標的」でもある。感染などを契機とした腺上皮細胞の破壊は,I型インターフェロン(interferon:IFN)の局所産生を引き起こし,炎症性の微小環境を形成する。同時に放出された自己抗原は,抗原提示細胞によりリンパ球へ提示されることで自己反応性リンパ球の活性化を引き起こし,自己抗体を産生する形質細胞の分化を誘導する。自己反応性のT細胞は腺上皮細胞を破壊し,自己抗原をさらに放出させる。この過程で生成された免疫複合体は,形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell:pDC)に結合し,Ⅰ型IFNの産生を介して病態を増悪させる。形成された免疫複合体,自己抗体,活性化リンパ球や形質細胞は患者の血流にのり全身を巡り,腎臓における病態形成に関与する。リンパ球や形質細胞が尿細管間質へ浸潤し局所で炎症を引き起こすことで尿細管間質性腎炎が,H+-ATPaseやNa+-Cl−cotransporter(NCCT)といったトランスポーターに対する自己抗体により遠位尿細管性アシドーシス(distal renal tubular acidosis:dRTA)をはじめとした酸塩基平衡障害や電解質異常を,免疫複合体が糸球体に沈着し炎症を引き起こすことで膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis:MPGN)のような糸球体障害が惹起されると考えられている2)。
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