血液疾患とAKI

Hematological diseases and acute kidney injury

はじめに

　Onco-nephrologyにおいて，悪性腫瘍の経過中に起きる急性腎障害（acute kidney injury：AKI）は重要な課題として注目されており，多発性骨髄腫（multiple myeloma：MM），リンパ腫，白血病などの血液疾患によるAKIは悪性腫瘍全体の20％程度と頻度が高い^1）。またMM，リンパ腫，白血病の経過中にAKIを発症する頻度も17～33％と高く^2），血液疾患におけるAKIの予防と治療は臨床的に重要な課題である。AKIを起こす機序としては尿細管間質障害が主体である。また，血液疾患におけるAKIの分類としては，疾患自体よる発症と治療後の併発とに大別される。前者として，白血球系ではMMやmonoclonal gammopathy of renal significance（MGRS）が，赤血球系と血小板系では血栓性微小血管症（thrombotic microangiopathy：TMA）が特に重要である。治療後の併発としては，腫瘍崩壊症候群（tumor lysis syndrome：TLS），化学療法や合併した感染に対して使用した抗菌薬などによる薬剤性腎障害などが挙げられる。最近の知見を交えて概説する。