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はじめに
本邦のガイドライン1, 2)において,壁深達度が粘膜下層(cT1b)と診断された胃癌の標準治療は外科的胃切除とされている。しかしながら,高齢者では年齢や併存疾患などの理由により,外科的胃切除がためらわれる症例もしばしば経験される。そもそも,cT1b病変が内視鏡的切除の絶対適応病変とならない理由は,術前診断の不確実性にある。すなわち,粘膜下層への浸潤距離が500μm未満(SM1)にとどまるcT1bを正確に術前診断できないためである。その結果,術前にcT1b1と診断された症例であっても,切除検体では粘膜下層浸潤距離が500μm以深(SM2)への浸潤が認められる場合(cT1b2)や,逆に粘膜内癌である場合(cT1a)もある。さらに,SM2以深に浸潤する癌であっても,すべてがリンパ節転移を伴うわけではなく,内視鏡的切除のみで根治しうる症例も存在する。以上のような背景をふまえ,術前診断の不確実性やリンパ節転移のリスクについて十分に説明し,患者の理解と同意が得られた場合には,「相対適応病変」として胃ESDの実施も考慮される。すなわち,日常診療においては,たとえ治癒切除の可能性が低くとも,高齢者に対してESDを実施する,palliative ESD(根治の可能性が低い,もしくは根治を目的としないESD)が選択されることもある。一方で,高齢者の早期胃癌患者に対して,年齢を考慮したESDと考慮しないESDを直接比較した報告はなく,経過観察とpalliative ESDを比較した報告もない。そのため,現行のガイドラインでは,ESDの適応に年齢を考慮することは今後の課題と位置づけられ,高齢者に対する治療方針決定に関して明確な基準が存在しないのが実情である。本稿では,当院において相対適応病変と判断したうえで胃palliative ESDを実施した85歳以上の超高齢患者を対象に,その背景およびpalliative ESDの短期・長期治療成績について報告する。

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