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疾患の概要
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)とは,ペニシリンに代表されるβラクタム系抗菌薬に対して耐性を獲得した黄色ブドウ球菌である。細菌学的にはmecAと呼ばれるメチシリン耐性遺伝子を保有しており,メチシリン以外の多くの抗菌薬(ペニシリン系,セフェム系,カルバペネム系)にも耐性を示す。一方,mecAをもたない黄色ブドウ球菌はメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus:MSSA)と呼ばれる。MRSA腸炎とは,抗菌薬投与による菌交代現象によりMRSAが異常増殖して発症する腸炎である。消化管手術後に多く発生するが,それ以外でも起こる。手術後のMRSA腸炎の発症機序は,術前から鼻腔に存在したMRSAが,胃切除や酸分泌抑制薬投与による低酸状態により胃を通過して小腸に到達した後,手術後の腸管麻痺によりMRSAが腸に滞留することにより小腸で増殖し,エンテロトキシンやtoxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)などの毒素を産生する。その結果,小腸全体にびまん性に炎症が広がると考えられている。同時に大腸にまで炎症が広がることがある。MRSA腸炎は,大量の下痢による脱水から急性循環不全を引き起こし,TSST-1によるtoxic shock syndromeやエンテロトキシンによるbacterial translocationからの敗血症により多臓器不全を併発し重篤化することがある。発症の危険因子として,抗菌薬投与,胃切除後,酸分泌抑制薬投与,腸管麻痺,術前のMRSA保菌,などが重要である。

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