特集 赤血球造血のメカニズムとその異常 -最近の進歩-
6.赤血球酵素とその異常
小倉浩美
1
,
菅野仁
2
Hiromi Ogura
1
,
Hitoshi Kanno
2
1東京女子医科大学医学部 輸血・細胞プロセシング科 非常勤講師
2東京女子医科大学医学部 輸血・細胞プロセシング科 教授
pp.1333-1341
発行日 2018年8月30日
Published Date 2018/8/30
DOI https://doi.org/10.20837/52018091333
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成熟赤血球は核やミトコンドリアを持たず酸化的リン酸化が欠如しており,赤血球膜の維持に必要なATP産生は解糖系に依存している。また,酸化的ストレスから赤血球膜蛋白や脂質を防御するために必須な還元型グルタチオン産生に必要なNADPHの生成には,五炭糖リン酸回路およびグルタチオン合成系,さらに不要なピリミジンリボヌクレオチドの処理やアデノシンリン酸供給のためのヌクレオチド代謝系がある。それぞれの系には複数の酵素が介在しており,赤血球酵素異常症では酵素の分子異常により代謝系に機能異常が起こり,赤血球破壊の亢進が進み先天性溶血性貧血の原因となる。診断は酵素活性測定と遺伝子検査によって確定される。G6PD異常症とPK異常症の頻度が高い。