- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
まえがき
哺乳類の成熟赤血球は核を失つて生命の単位としての細胞の条件を欠いているため,はたして生きているのか疑われて来た。赤血球の主要生理作用は酸素,炭酸ガスの運搬であるから生きた細胞というよりもヘモグロビンを入れておく単なる袋と考えられていた。
ところが,臨床医学において輸血のための保存血の研究が盛んとなり,クエン酸加血にブドウ糖を加えると安定になつて長期間にわたつて保存できることが明かになつた。しかも,この際,赤血球がブドウ糖を代謝して乳酸にすることを再認して以来,俄然,赤血球は生きた細胞として確認されるようになり,その動的物質代謝の研究が盛んになり,またそれにあずかる酵素の研究が行われるようになつて,この方面の立派な単行本および綜説1)〜5)が公にされている。
Among enzymes in blood, numerous enzymes are present in blood serum but those pre-sent in erythrocytes are limited ones (Tab. 1).
Although in immature erythrocytes many kinds of enzymes or enzyme systems exist, these enzymes or enzyme systems diminish with the process of maturation and only limited enzymes remain in normocytes. However, only carbonic anhydrase among enzymes in erythrocytes increases the activity with the process of maturation at the present time (Tab. 6).
Copyright © 1958, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.