わだい
動物における赤血球酵素異常
前出 吉光
1
1北海道大学獣医学部内科学講座
pp.1389
発行日 1988年10月30日
Published Date 1988/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913812
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溶血性貧血を伴った赤血球酵素異常症は動物ではまれである.これは,ヒトに比べて動物でのそれらの発生頻度が低いというよりは,その存在が見逃されている可能性がより高いことによるように思われる.本稿では最近筆者らが発見したイヌの遺伝性赤血球酵素異常について紹介する.
イヌ赤血球の特徴の一つは,Na,K-ATP aseを完全に欠いていることである.細胞膜に存在する同酵素は,よく知られているように,ナトリウムイオン(Na+)を細胞外に汲み出し,同時にカリウムイオン(K+)を細胞内に取り込む.このため,同酵素を有する多くの動物赤血球の陽イオン組成は,血漿中のそれに比べ,Na+濃度は低く,K+は高濃度であるが,イヌ赤血球は(ネコも同様であるが),同酵素を欠くために,血漿中の陽イオン組成と同じく,高Na+,低K+となっている.ところが筆者らの発見したイヌでは,赤血球Na,K-ATPase活性が非常に高く(ヒト赤血球の約3倍〉,このため赤血球内は低Na+,高K+であった.このことから,筆者らはこれらのイヌ赤血球をHK(high K)型イヌ赤血球,正常なイヌの赤血球をLK(low K)型イヌ赤血球と呼んでいる.
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