特集 アレルギー・免疫疾患と東洋医学
Ⅱ.臨床 7.関節リウマチに対する鍼灸治療
粕谷大智
1
Daichi Kasuya
1
1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部鍼灸部門主任
pp.412-419
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201603412
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リウマチ友の会のアンケート調査では,医療保険適応外の治療を全体の26%のリウマチ患者が行っており鍼灸マッサージ治療が上位を占めている。しかし,EBMなど医療では科学的な根拠が強く求められ,鍼灸が正当で有効な治療法として受け入れられるためには,比較対照群を設けた臨床試験で有効性を証明していく必要があるが,本邦において比較対照群を設けた鍼灸の臨床報告は少ない。我々が170名を対象とした「関節リウマチに対する鍼灸治療の多施設ランダム化比較試験」では,1年間の経過観察で薬物療法単独群よりも鍼灸と薬物療法の併用群で有意にACR20の改善基準やAIMS-2によるQOLの向上を認めた。この結果は,従来の治療に鍼灸治療を併用することで身体機能低下を予防し,血行改善や精神的安定も得られ,関節リウマチ患者のQOL向上に寄与することが示唆された。基礎研究では抗炎症作用を示唆する報告も散見されるが臨床研究では不明な部分も多く,炎症性自己免疫疾患の臨床上の効果である鎮痛や機能障害の軽減の作用機序の解明が待たれるところである。