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連載 薬物開発物語(3)
わが国の抗菌薬開発の歴史と秘話~ペニシリンの発見から小児用キノロン製剤の創製まで~
The history and secret story of development of antibiotics in Japan from penicillin to quinolones for pediatric patients
野村伸彦
1
Nomura Nobuhiko
1
1富山化学工業株式会社綜合研究所製品情報部部長
pp.118-126
発行日 2016年5月25日
Published Date 2016/5/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201606118
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1929年に英国のフレミング博士によって発見されたペニシリンは,当時,各国による熾烈な開発競争が行われる中,1942年にはじめて米英によって開発された。一方,わが国でも,ほぼ同時期にペニシリンの開発が行われていたことは意外に知られていない。わが国では1944年2月に研究が開始され,空襲などの戦時下の過酷な環境の中,わずか9カ月という驚異的な速さで,ペニシリンの開発に成功している。当時培われた技術は,戦後,わが国が数多くの新しい抗菌薬を輩出する礎になったとも言える。キノロン系薬であるトスフロキサシンは,肺炎球菌とインフルエンザ菌に対する強い殺菌効果と高い安全性の両立を目指して開発された。その後,小児感染症領域においても,学会からの強い要請を受けて小児用細粒剤が開発され,今日,小児の肺炎患者の入院率減少や中耳炎患児の鼓膜切開率減少に寄与しているものと考えられる。