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毎年冬になるとインフルエンザの流行シーズンがやってくる。今年(2016年)は正月明けまでは大きな流行はみられなかったが,2月になり流行が観察された。毎年の冬のインフルエンザの流行は,多くの人々がインフルエンザワクチンを接種していても起こってしまう。それは,現行のワクチンにより誘導される血中の免疫は上気道の粘膜表面で起こるインフルエンザウイルスの感染阻止には不十分であるためである。感染を阻止するためには,感染の場である上気道粘膜上に感染を阻止しうる免疫を誘導する必要がある。そのために現在開発が進んでいるのが経鼻インフルエンザワクチンである。その名の通り,鼻に噴霧して投与するタイプのワクチンである。現在,注射で行われている皮下接種のワクチンと比較し,痛みをともなわず簡便に接種が可能である。しかし,その特徴は接種の簡便さだけでなく,誘導される免疫に大きな違いがある。現行のワクチンで誘導される免疫は,おもに血中を循環する全身性の液性免疫であるのに対して,経鼻ワクチンは粘膜表面に分泌型IgA(免疫グロブリンA)抗体を誘導する。血中の抗体はインフルエンザウイルスの感染を阻止するものではないのに対し,粘膜免疫の主役である分泌型IgA抗体は粘膜面の表面で感染を阻止することができる。さらに,分泌型IgA抗体には変異ウイルスに対する交叉防御能がある。インフルエンザ粘膜ワクチンは粘膜免疫を誘導し,インフルエンザワクチンの目標を達成するための強力なツールになる。しかし,粘膜免疫,とりわけ呼吸器におけるその機能についてはまだ不明な点が多い。粘膜ワクチンもその臨床開発はまだこれからである。次世代ワクチンとしての粘膜免疫誘導による不活化経鼻インフルエンザワクチンの開発について概説する。