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特集 ヘリコバクター・ピロリ感染症の診断と治療 up-to-date
1.ヘリコバクター・ピロリとは何もの -病原性の歴史も含めて-
What is Helicobacter pylori -Review including the history of the virulence-
山岡吉生
1
Yamaoka Yoshio
1
1大分大学医学部環境予防医学講座 教授
キーワード:
ヘリコバクター・ピロリ
,
病原性
,
CagA
,
MLST
,
次世代シーケンサー
,
人類移動
Keyword:
ヘリコバクター・ピロリ
,
病原性
,
CagA
,
MLST
,
次世代シーケンサー
,
人類移動
pp.30-38
発行日 2014年9月25日
Published Date 2014/9/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201410030
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ヘリコバクター・ピロリは人類に広く蔓延し,胃炎や消化性潰瘍,さらには胃がんを引き起こす病原菌であるが,世界各国において遺伝子型が異なり,その多様性が病原性に影響している可能性が高い。さらに,この多様性を利用すれば諸民族の移動経路の追跡が可能である。ヘリコバクター・ピロリの遺伝子はヒトの遺伝子に比べ突然変異率が高いため,特に短期間(数千年~数万年)における詳細な変化を知ることができる。すなわち,現生の人類は約10万~5万年前にアフリカ大陸から世界に拡散した集団の子孫であるが,それより以前に人類の胃に棲みついたヘリコバクター・ピロリも人間とともに各地へ移動したことがわかってきた。おそらく,各地で適応できるタイプへと進化してきたと考えられる。現在,近代化が進み,衛生状態がよくなり,除菌療法も世界中で施行されており,ヘリコバクター・ピロリ陽性率は激減してきている。さらに,民族の移動,他民族との交流も頻繁になっており,ヘリコバクター・ピロリを用いた人類学的研究はいま,行わなければならない。