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特集 地球規模で広がる耐性菌 -抗菌薬の多角的使用とその功罪-
9.医薬品類による水環境汚染と薬剤耐性菌の発生
Pharmaceuticals contamination and occurrence of antibiotic-resistant bacteria in aquatic environment
田中宏明
1
,
山下尚之
2
,
堅川陽平
3
Tanaka Hiroaki
1
,
Yamashita Naoyuki
2
,
Katakawa Yohei
3
1京都大学大学院工学研究科附属流域圏総合環境質研究センター 教授
2京都大学大学院工学研究科附属流域圏総合環境質研究センター 講師
3京都大学大学院工学研究科附属流域圏総合環境質研究センター
キーワード:
下水処理
,
医薬品類
,
薬剤耐性
,
水平伝播
Keyword:
下水処理
,
医薬品類
,
薬剤耐性
,
水平伝播
pp.92-96
発行日 2013年5月25日
Published Date 2013/5/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201306092
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下水道の普及率向上にともない,BOD(生物化学的酸素要求量)で代表されるわが国の水環境の水質は大きく改善してきたが,環境水中に占める下水処理水の割合が増加している。下水道や浄化槽の普及は水洗化の普及でもあり,水環境中での屎尿由来の汚染物質に対して下水道や浄化槽が十分なバリア機能をもたなければ水環境での新たな汚染も懸念される。近年,問題として認識され始めた医薬品類や薬剤耐性菌もそのひとつであり,医薬品類や薬剤耐性菌による汚染が懸念される。薬剤耐性遺伝子には菌種間で伝播するものがあり,臨床分離株において薬剤耐性率が増加していることから,水環境中の細菌においても薬剤耐性率の増加が懸念される。河川水等の環境水中の細菌の調査結果からは,おもに使用開始後,長期間が経過した薬剤への耐性が認められている。現状の水環境では治療上重要な薬剤に対する耐性細菌が頻繁にみられているわけではないが,残存性が高い薬剤耐性遺伝子が報告されていることや,極低濃度でも水環境中での病原体の薬剤耐性化が懸念される抗インフルエンザ薬による汚染が報告されていることから,水環境での薬剤耐性菌の動態をさらに検討することが必要である。