特集 環境リスク
医薬品類による環境汚染の現状と課題
篠原 亮太
1
1熊本県立大学環境共生学部
pp.300-304
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101775
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はじめに
Chemical Abstracts Serviceに登録された化学物質は,2008年の時点で40千万種を超えている.このような膨大な化学物質は,われわれに近代的な生活を提供してきた反面,PCB(ポリ塩化ビフェニル)によるカネミ油症事件やDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)などの塩素系農薬汚染問題,外因性内分泌撹乱物質問題など様々な化学物質による汚染問題を引き起こしてきた.われわれはこのような事例を通し,化学物質の使用方法や管理方法を誤れば,ヒトへの健康被害のみならず,生態系全体に致命的な影響を与えることを学んだ.しかし,産業活動や日常生活における化学物質の役割は極めて大きく,化学物質の生産量や使用量はますます拡大の傾向にある.これら化学物質の環境リスクを低減するには,その効果的な処理方法を開発し,さらに環境中での挙動を事前に調査する必要が求められている.
本稿では,化学物質の中で,現在,新興汚染物質として注目を集めている医薬品類の環境汚染の現状と課題を紹介したい.
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