特集 免疫チェックポイント療法の新潮流
8.泌尿器科癌(腎細胞癌,尿路上皮癌)
冨田善彦
1
1新潟大学医学部腎泌尿器病態学・分子腫瘍学・教授
pp.1853-1861
発行日 2018年8月1日
Published Date 2018/8/1
DOI https://doi.org/10.20837/12018081853
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進行腎細胞癌の生存期間は2008年から導入された分子標的薬で延長したが,全生存期間は概ね40カ月であり,さらなる改善が期待されていた。腎細胞癌に適応となった抗PD-1(programmed cell death-1)抗体ニボルマブは,分子標的薬による血管新生阻害治療抵抗性となった症例で有用であり,長期の腫瘍コントロールの期待できる症例もある。ただし,奏効する症例は30%程度にとどまり,さらなる効果の増強のために併用療法が試みられている。CheckMate214試験では1次治療としてスニチニブとニボルマブとイピリムマブの併用療法を比較するランダム化試験が行われた。この結果,IMDC(International mRCC Database Consortium)リスク分類で中間,高リスク群では併用療法群が有意に高い奏効率,全生存期間を示し,新たな標準治療となることが期待される。
進行性尿路上皮癌(膀胱癌)に対する治療はシスプラチンやカルボプラチン,ゲムシタビンを用いた多剤併用化学療法であったが,その予後は30年以上改善されておらず,新たな治療法の登場が期待されていた。尿路上皮癌は,悪性黒色腫や非小細胞肺癌と並んで遺伝子変異の頻度が高く,また,上皮内癌にはBCGの膀胱内注入療法が有用であるなど,免疫療法への高い感受性が想定されていた。アテゾリズマブやニボルマブ,ペムブロリズマブ,アベルマブ,durvalumabが主に第II相臨床試験の結果,有用性が示され,米国食品医薬品局(FDA)では尿路上皮癌に対して認可されており,日本でも開発が進んでいる。