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[目的]1次検査で要精密検査判定となった場合の精密検査受診意欲に対する内視鏡検査に伴う不快感,検査時間,自己負担検査費用の影響について,コンジョイント分析の手法を用いて検討することとした。 [方法]楽天リサーチ株式会社の調査パネルに登録している登録者のうち,がん検診対象年齢である40~ 79歳の男女であり,胃または大腸がん検診において要精密検査判定を受け,その際に精密検査を受診した精密検査受診経験者,および受診しなかった精密検査受診非経験者のそれぞれについて,インターネットを利用したアンケート調査を行った。本研究に使用したコンジョイント分析における属性(検査時間,自己負担検査費用,検査時の不快感)およびその水準は,鎮静を行わない従来の内視鏡検査,プロポフォールを使用した鎮静を行う内視鏡検査およびその中間の3つのケースにおいて想定される値として,胃および大腸がん検診を想定したそれぞれについて,専門医の意見を参考に設定した。各属性におけるすべての水準の組み合わせにおける推定精密検査受診率は,プロビットモデルによる回帰分析により導出した推計式を用いて推計した。 [結果]分析の結果,検査時間,自己負担検査費用,不快感のうち,受診意欲に対する部分効用値の変動が最も大きかったのは不快感であった。プロビットモデルによる推定受診率の推計の結果,胃がん検診を想定した場合,プロポフォールを使用した鎮静を行う内視鏡検査を導入することによって,推定精密検査受診率は48.8%から62.7%(約1.28倍)に改善すると推計された。大腸がん検診を想定した場合,プロポフォールを使用した鎮静を行う内視鏡検査を導入することによって,推定精密検査受診率は43.8%から53.3%(約1.21倍)に改善すると推計された。 [結論]内視鏡検査に伴う不快感を軽減することによって,がん検診における精密検査受診率を大きく改善できる可能性が示唆された。今後,がん死亡率減少を目的とした胃がん検診および大腸がん検診に関するあらゆる対策を検討する際の基礎情報として,本研究の結果が利用されることが期待される。