特集 高齢者医療におけるサルコペニア・フレイル対策
6.サルコペニアと漢方療法の可能性
萩原圭祐
1
1大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄附講座・准教授
pp.2131-2138
発行日 2015年9月1日
Published Date 2015/9/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201509087
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牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)は,従来,高齢者の腰痛やしびれに対し経験的に使用されてきたが,その薬効機序は不明であった。我々は,サルコペニアを漢方でいう腎虚の一症状と考え,老化促進マウスであるSAMP8を使って,牛車腎気丸の骨格筋への作用を検討した。SAMP8では,サルコペニアに特徴的である筋萎縮と線維化,速筋の減少を認め,サルコペニアモデルマウスとして適切であることが確認された。牛車腎気丸を服用させるとSAMP8の筋萎縮が改善され,その分子薬理機序として,インスリン/IGF-1(insulin-like growth factors-1)シグナルの改善・ミトコンドリア機能の回復・TNF-α(tumor necrosis factor-α)の産生低下が明らかになった。今回の解析結果により,牛車腎気丸は,サルコペニアの治療薬として有望であることが示された。