医薬ジャーナル論壇
「社会全体で診る医療」の光と影
佐藤博
1
1新潟大学医歯学総合病院教授・薬剤部長
pp.1513-1515
発行日 2014年6月1日
Published Date 2014/6/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201406027
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4月に総務省統計局より公表された人口推計によると,日本の65歳以上の人口割合が,遂に25%を超えたという。15歳から64歳までの生産年齢人口は約7,900万人に減少し,いよいよ2人で1人の高齢者の生活から医療までを支える時代へ突入した。医療コスト削減の方策の下,医療から介護,病院から在宅を含む地域,医師などの医療職からケアマネジャーと,従来の病院完結型医療から地域包括ケアシステムへのシフトは急峻である。将来的に,情報技術サービス,サービス付き高齢者住宅など,さまざまな産業が医療・介護分野に参入することで,患者や国民は医療サービスの多様化の恩恵を数多く享受するであろう。一方,患者やその家族は,医療サービスの普及の対価として,個人の医療情報の拡散による人権保護のリスクが増大することや,医療・介護を受けるに当たって自己決定を含めた自己責任の拡大を覚悟する必要があろう。